カジノのポーカールームのディーラーの告白

私がもっと若かったとき、テキサスホールデムをプレーするためにポーカーテーブルにつくことは、スリル以外のなにものでもありませんでした。

チップのスターティングスタックからチップの山を築くのには中毒的な魅力がありましたし、私は持ち前の競争心を通じて、すべてのセッションからポーカーのあらゆる側面を学んでいました。相手やその傾向、プリフロップとポストフロップのハンドの範囲、ブラフの技術など、ポーカーは本当に情熱を傾けられる対象でした。

ですが、ある朝目が覚めてポーカールームに向かうと、その興奮する気持ちはまったく消え去っていました。依然として莫大なポットを獲得できるでしょうし、テーブルでの会話も軽妙に行えるでしょう。ですが、かつてのようにアクションに没入することは出来ないように思えたのです。

そして、私は随分前に安定した収入と引き換えにポーカーで生計を立てるという夢を捨て、立場をプレーヤーからディーラーに替えました。

ポーカーを非常に長い間プレーしてきたので、役割を反対にしてディーラーをするのは簡単だろうと思っていました。

つまり、難しいなんてありえるの？と思っていたということです。それぞれのプレーヤーに2枚ずつカードを配り、コミュニティカードを配り、ポットをプッシュする...自分なら簡単にできると思っていました。

ですが、驚いたことにリアルタイムでキャッシュゲームの全体やトーナメントのテーブルを監督することは、つまりベットを正確に勘定し、プレーヤーをルールに従わせ、そういったことを常に笑顔で行うことは、トレーニングとスキルが必要な列記とした専門職だったのです。私は、そういったトレーニングを受けスキルを身に着けるために、実家に戻って地元のカジノに応募する前に、ラスベガスにあるカジノのディーラーの教育プログラムを受講しました。

それは今から5年前のことだったはずです。そして、私は現在に至って、自分のことをプレーヤーというよりもディーラーだと思うようになりました。私にとってディーラーこそが食事を賄い各種料金を支払うためのフルタイムの仕事なので、真剣に取り組んでいます。

というわけで、私はディーラー側からしか学ぶことができない秘密をいくつかご紹介しようと思いました。この仕事は一般的に思われているような仕事ではありませんし、私も実際にディーラーになってみて分かりましたが、平均的なダウン(テーブル上で過ごす30分間の略称)の間にディーラーが本当に経験していることを軽く考えていました。

そして今、立場がテーブルの反対側に変わりました。この記事の続きを読んで、ポーカーを取り仕切っている静かな見張り番であるディーラーの1日について学んでみてください。

ディーラーの仕事はテーブルにつくずっと前から始まっている

プレーヤーが最初にディーラーとやり取りするのは、ポーカーテーブルにつくときです。その後の30分、このディーラーの指示に従うことになりますが、やっていることの様々な側面を自由に監視できます。

プレーのペースや、スタックを正確かつ効率的に勘定する能力、そしてちょっとした会話をする意思などが、プレーヤー側からのディーラーの印象の殆どを構築します。

ですが、テーブルに最初のカードを配る1時間も前からディーラーが懸命に働いていると知れば驚くかもしれません。

その理由は、ポーカーのディーラーはゲームが始まるよりも早く出勤して、作業の準備をしなければならないからです。平均的な日では、$1/$2のノーリミットゲームや、$3/$6のリミットゲーム、キャッシュゲーム、そしてトーナメントなど、いくつかの種類のポーカーをローテーションします。

簡単そうに聞こえるかもしれませんが、私が知っている優れたディーラーたちは、その日のローテーションを研究し準備をするための時間を取っています。ポーカールーム内で移動する経路を図にしておくこともあります。ディーラーはシフトの間に担当するテーブルのリストを与えられているので、、それに基づいてそれぞれのテーブルで起こり得る様々なシチュエーションについて考えています。

例えば、ある日のシフトでリミットホールデムを数多く担当することが分かっていれば、楽しむためだけにプレーする年齢層が高めの常連客たちが安定して訪れることが予想できます。

そういったダウンは一般的によりリラックスした雰囲気なので、ノーリミットのホールデムの白熱した雰囲気とは異なっています。また、リミットゲームはノーリミットゲームよりも精神的な負担も少ないです。なぜなら、ディーラーはすべてのベットを詳細に勘定する必要がないからです。

一方で、ある日のローテーションにノーリミットのホールデムが大量に含まれている場合は、大変な仕事をこなすために心の準備をします。

一般的に、1回のダウンで数百回ものベットを勘定することになるので、エスプレッソを1杯飲んでおきます。綺麗なスタックをスライドさせるのが好きなプレーヤーたちもいて、彼らはディーラーにとってはありがたい存在ですが、メチャクチャにポットにチップを入れるプレーヤーたちもいるので気を付けておく必要があります。ですが、いずれにしても瞬時にベットサイズを把握し、チップを簡単に勘定できるようにスタック状に積み上げ、テーブルについている全員にベットサイズを告げるのが私の仕事です。

また、ノーリミットのプレーヤーたちは、リミットのプレーヤーたちよりも遥かに積極的です－これはプレースタイルのことではありません。ノーリミットのダウンの間は、ほんの少しミスをしただけでも激しく批判されたり、女性のディーラーの課すルールには従えないという男性から叱責されたり、口説かれたりしても大丈夫なようにいつも心の準備をしています(これについては後から更に詳しく説明します)。

こういったことをすべて踏まえ、1日のダウンのローテーションを研究することが、大変な仕事の準備を整えるために不可欠な最初の一歩なのです。

そして、これはキャッシュゲームのためだけではありません...

デイリートーナメントやナイトリートーナメントを実施している週末のシフトでは、フォーカスが一変します。トーナメントのディーラーは、ブラインドの構造と、賞金や再エントリーなどの他の要素も理解しておくことが期待されています。

トーナメントに参加している間、ブラインドの構造に関する書類を常に携帯しているプレーヤーがいることをご存知ですか？想像してみてください。ブラインドの金額や、いつ増額されるか、休憩が予定されている時間、そして再エントリー時間の締め切りなどのすべての情報を記憶して、参加者のリクエストに応じて思い出さなければならないのです。

どんなイベントであっても、ポーカーのディーラーはただ座ってカードを配っていればいいというわけにはいきません。私たちディーラーは、ポーカーをしている最中に発生するかもしれないすべてに準備を整えるために懸命に働いています。信じられないかもしれませんが、本当にすべてに対して準備を整えているのです。

1つ1つのダウンはどれも異なっている

プレーヤーたちがディーラーに対して持っているもう1つの誤解は、この仕事がどのテーブルでも同じだというものです。

実際は、即興で様々な要求に応えるために仕事を調整しなければなりません。

$2/$5のノーリミットホールデムで2つのダウンを連続で扱った過去のシフトの話をしましょう。最初についたテーブルでは、お互いに本気で憎しみ合っていた2人のプレーヤーが早い段階から頻繁に火花を散らしていました。

私が席についたときには、既にこの2人がテーブルを挟んで言い争いをしていました。

「お前は俺のゲームでそんな軟弱なプレーをするのか？ターンで糞フラッシュを作ったらいい。俺はリバーで俺のハンドを作るぜ。お前みたいな糞プレーヤーにはそれがお似合いだ！」

ポーカールームでは罵詈雑言は禁止だったので、私はすぐに罵詈雑言を言っているプレーヤーを睨みつけましたが、その時点では何も言いませんでした。結局のところ、私の生活はトーク(ディーラーが使うスラングで、ポットが獲得された後にディーラーに与えられるチップ)に懸かっているます。不作法で、虚勢を張り、叫び声を上げるようなプレーヤーも、勝てば多くのチップをくれるのです。

この時点で、私は睨みつけて頭を振るだけでこのプレーヤーが理解してくれることを願っていました。

そして、それはいずれにせよ数ハンドのことでしかありませんでしたから...

それも、このプレーヤーのポケットキングが相手の弱そうな5-6のスーツに負けるまでのことでした。ご想像の通り、この相手のプレーヤーがまたフラッシュを完成させたのです。今回はリバーで$250をコールした後だったので、罵詈雑言を言っていたプレーヤーが正気を失いました。

彼は椅子を吹き飛ばしながら勢いよく立ち上がり、大声で叫びました。

「お前は糞野郎だ。なんでそんな糞みたいなプレーができるんだ!? 他のマヌケどもと一緒に$1/$2に戻れ、ここはお前のいる場所じゃない...$300をコールして6ハイのフラッシュだなんて、お前はどれだけ馬鹿なんだ？」

私が働いてる場所では個人的な侮辱は厳禁だったので、最後の発言で堪忍袋の緒が切れました。私はディーラーとしては最もしたくないことではありますが、上司に知らせざるをえませんでした。この罵詈雑言を言っていたプレーヤーは獲得した賞金を持ってすぐにテーブルから退去させられました。

この判断によって新たに大騒ぎが発生しましたが、幸いなことにこの怒りの矛先は私ではなく上司でした。

とは言え、この騒ぎのせいで、このダウンの残りの部分では、残った8人のプレーヤーたちは私と目も合わせようとしませんでした。

結果として、罵詈雑言を言っていたプレーヤーは、コントロール不能な偏りと数杯のカクテルを合わせて$3000という手ひどい損失を出すことになりました。この$2/$5のゲームのバイインの上限は$500だったので、このプレーヤーはこのゲームで6発の「弾丸」を打ち、そのすべてをミスしたということです。

敢えて言えば、テーブルについていた他のプレーヤーたちは、このプレーヤーに残って貰ってもっとチップを吐き出して欲しいと思っていたでしょう。ですが、私は彼を退場させてこのパーティーを終わりにしました。

この30分のダウンがなんとか終わったとき、私が獲得していたトークは僅か$8でした。これは$2/$5のゲームで通常得られる$25からは程遠い金額でした。

ですが、ディーラーとしては、最善を尽くしてカジノのルールを執行することが仕事です。たとえそれによって自分のトークを犠牲にしたとしてもです。

幸いなことに、私が担当した次のテーブルの雰囲気はまったく違うものでした。そのテーブルのプレーヤーたちは冗談を言いながら笑い合っており、1人の紳士に至っては他の8人のプレーヤーに飲み物をおごっていました。

1つの特に大きなポットでは、優れたポケットペアが弱いスーツのコネクターに負けるという静かなホラーを目撃しました。これはかなり酷い「バッドビート」で、私はこのダウンの後、ムードが一変すると思っていました。

ですが、この負けたプレーヤーは勝ったプレーヤーに手を差し伸べてハイタッチをして勝利を祝っただけでした。

この雰囲気はこちらにも伝わってきて、私はすぐに会話の中に引き込まれていきました。誰もが笑いながらプレーを楽しんでいましたし、私もディーラーとしての仕事を楽しんでいました。

そして、休憩室に戻ってトークを計算すると、1回のダウンで$78も獲得できていました。ですが、その大部分は1枚の「グリーニー」($2/$5のテーブルで時折使用される緑色の$25のチップ)によるものでしたが、全体としてこのダウンは非常に良いものでした。

この僅か1時間の私の感情はジェットコースターのようでしたが、これはポーカーテーブルではよくあることです。

トークは女の子の最良の友

先ほどトレーニングスクールでは教えてくれないポーカーのディーラーという仕事の1つの側面について触れました。つまり、異性からの望まないアプローチのことです。

実際、私はすでに結婚していて、夫のことを愛していますが、私が受け持つプレーヤーたちの殆どはそんなことは知りません。

なぜなら、私はテーブルにつくときに結婚指輪をしていないからです。殆どの女性ディーラーは、ポーカールームというほぼ男性しかいない場所で仕事をする中で、意図的に指輪をしない判断をしています。どんなダウンの間でも、私が席につくとき9人の男性から見られると思っています。確かに女性のプレーヤーも来ますが、私が日夜対処しているプレーヤーの殆どは男性です。

そして知っているでしょう？男性は女性のディーラーが取り仕切っているゲームの方が好きなのです。

私は仲間の女性ディーラーたちに尋ねてみましたが、そうではないと言う意見はありませんでした。というわけで、以下の現象は一般的に発生していると考えられます。

女性が結婚指輪をつけながらディーラーをすると、トークの頻度と金額が著しく低下するという現象です。ですが、女性ディーラーが髪の毛をセットして、ピッタリとした服を着て、最も重要なこととして結婚指輪を付けていなければ、安定してトークを得ることができます。

結局のところ、男性はスリルとハンティングが好きなので、ポーカーテーブルについている独身女性がある種のチャンスのように見えているのでしょう。私はスリーサイズのことを直接的に尋ねてきた80歳の男性や、仕事の後に遊んでいる場所を恥ずかしそうに尋ねてきた21歳の大学生などのいるテーブルでディーラーをしてきました。

私はどんなときでも興味があるような目つきで作り笑いをしながら楽しそうに会話を続けます。

私の夫はこういった戦略をすべて知っています。夫もポーカープレーヤーなので、実情を分かっていまし、事実、こういったことを推奨すらしています。

しない理由がないでしょう？$1のトークを$5の「レッドバード」に変えるために必要なことが思わせぶりな言動なんだとしたら、なんとしてでもそうすべき、それが夫の意見です。

興味深いことに、私がディーラーをしながらそういった会話をしている男性の多くは結婚指輪をしていますが、いけそうな雰囲気になると結婚指輪を隠そうとするのです。ですが、彼らが感じている「繋がり」が30分のダウンより長く続くことはないと私は分かっているので、私は彼らが指輪をしいようがいまいが気にしていません。

とは言え、仕事を初めた最初の数ヶ月は、トークを増やすために女性的な魅力に頼ることに悪い気がしていました。私は自分を独立した進歩的な女性だと思っていますが、ここでは自分の顔と身体を使って1回のダウンから得られる利益を増やそうとしています。

ですが、最終的に私はこれが自分の選んだ人生の一部として受け入れるようになりました。特に、休憩中に何人かの男性ディーラーたちと話をする過程でそう思うようになりました。事実、女性のポーカープレーヤーたちも若い男性ディーラーたちに嫌らしい視線を送ったり、不適切な質問をしたりすることで悪名をとどろかせています。

私はこれが性差別的な問題やジレンマでないことに気が付きました。むしろ、これはポーカーテーブルにおけるダイナミズムの本質だということに気が付いたので、今ではトークのために思わせぶりな言動をすることを全面的に受け入れています。

ディーラーたちはプレーヤーたちのプレーを静かに研究している

私は他のディーラーたちと同様に、ポーカーをプレーしてきた経歴があるので、日々他人のプレーを監視することを自然に行っています。

監視という言葉はちょっと仰々しいので、研究と言っておきましょう。いずれにせよ、ディーラーをしているとき、私はゲームの仕組みとルールだけに集中しているわけではありません。

私はプレーヤーたちがブラフをしながらチップを扱うしぐさと、ナッツを持っているときのしぐさを比較したりしています。ポットが大きくなる過程におけるベットサイズを追跡しながら、それぞれのプレーヤーのハンドを絞り込んでいます。そして、ショーダウンのときに、自分の読みが実際のハンドと合っていたかどうかを確かめています。

今や、これは意識的なプロセスですらありません...これは好むと好まざるとに関わらず、頭の片隅で発生しているノイズのようなものです。非常に長い間ポーカーをプレーしてきて、担当しているハンドを分析したり検証したりせずにはいられなくなっているのです。

誤解しないでくださいね。私はプレーヤーたちのプレーについてあれこれ言ったことはありません。それはディーラーの仕事ではありませんから。私がすることと言えば、運が悪いプレーがあったときに眉を顰めたり、素晴らしいプレーがあったときに気付かれない程度に頷いたりするくらいのものです。

この静かな分析は自分のためのものです。私は常に自分のプレーを改善したり、新しいスキルを身に着けたり、欠点を克服したりしたいと思っています。そして、リアルタイムでプレーされている数百・数千のハンドを観察すること以上にポーカーを上達できる方法なんてないでしょう？

仕事が終わった後に、それまで仕事をしていたポーカーテーブルについているディーラーが数多くいると知れば驚くはずです。ディーラーたちも興奮したりイライラしたりしながらプレーしていますし、僅かな例外を除けば長期的には殆どのディーラーたちが負け越しています。

なぜなら、8時間も多くのプレーヤーたちが莫大なポットを獲得したり、大胆なブラフをしたりしているのを見てきて、ディーラーたちもそこに加わりたくて待ち切れない気分になっているからです。事実、多くのディーラーたちは、ディーラーとしての立場からの視点が、常連客たちを相手にしてプレーする際に特別な洞察を与えてくれると考えています。

私はこの考え方がどれくらい正しいか分かりませんが、ディーラーをしながらいくつかのことを学んだことは確かです。テルや、ティルトのコントロール、そして積極的にブラフをするプレーヤーに共通する傾向などの側面は、ディーラーという外側の立場にいるときに最も効率的に学ぶことができます。

結論

ディーラーは賑やかポーカールームの中で最も過小評価されている要素ですが、ディーラーなくしてはゲームが展開しません。信じられませんか？プレーヤー自身でカード配るゲームを身内でやってみてください。カードの配り間違いなどのミスが出れば、訓練を受けたプロフェッショナルなディーラーがいればまったく違うということにすぐに気が付くはずです。

私は若い女性としてポーカーに出会えたことに本当に感謝しています。そして、ポーカーをプレーすることで生計を立てることはできませんでしたが、愛するポーカーに携わることで生計を立てられることは掛け替えのない経験です。

というわけで、次にポーカーをプレーするときは、ディーラーの視点からポーカーを見てみてください。礼儀正しく楽しみながら気前よくトークをくれれば、私たちディーラーはいつでも最高のおもてなしをすることをお約束します。